グループ通算制度の導入に伴う単体制度の見直し

2022年4月1日から、従来の連結納税制度がグループ通算制度に移行しました。それに伴い、グループ通算制度を適用している

企業グループと適用していない企業グループとの中立性・公平性を保つ観点から、いくつかの単体制度について見直しが行わ

れましたので、そちらをご紹介します。

グループ通算制度を適用しない場合であっても以下の見直しが適用されますので、ご注意下さい。

 

 1.株式等の区分判定の見直し

 

改正前

令和4年4月1日~

(1)完全子法人株式等

発行済株式総数の全てを一定期間保有

同左

(2)関連法人株式等

発行済株式総数の3分の1超の株式等を一定期間保有(単体法人は個社で判定)

発行済株式総数の3分の1超の株式等を一定期間保有(完全支配関係がある法人が有する株式を含めて判定

(3)その他株式等

(1)(2)(4)いずれにも該当しない株式等

同左

(4)非支配目的株式等

発行済株式総数の5%以下に相当する株式等を基準日において保有(単体法人は個社で判定)

発行済株式総数の5%以下に相当する株式等を基準日において保有(完全支配関係がある法人が有する株式を含めて判定

  例えば、親法人A社の子法人B社・C社がそれぞれD社の株式を保有している場合に、改正前であれば単体法人ごとの保

  有割合で判定すれば良かったのですが、今後はグループ全体での保有割合を合算して判定を行うことが必要になります。

  仮にD社の株式の内、B社が3%・C社が4%を保有していたとします。

  改正前であれば、両社とも(4)非支配目的株式等に該当していました。

  しかし、改正後は両社の保有割合を合算して判定(3+4=7% > 5%)となるため、(3)その他株式等該当することと

  なり、両社とも受取配当等の益金不算入割合が20%⇒50%に増加します。

  このように、改正後は区分が変わることで受取配当金の益金不算入額が増えるケースが予想されます。

 

 2.寄附金の損金算入制度の見直し

  例えば、一般寄附金の損金算入限度額は次の算式で計算されます。

   損金算入限度額=所得金額×2.5%+資本金等の額×当期の月数÷12×0.25%

  この算式における「資本金等の額」が、「資本金の額及び資本準備金の額の合計額又は出資金の額」に変更となります。

 

 3.貸倒引当金の対象法人の見直し

改正前

令和4年4月1日~

内国法人がその内国法人との間に連結完全支配関係がある連結法人に対して有する金銭債権

内国法人がその内国法人との間に完全支配関係がある他の法人に対して有する金銭債権

  つまり、個別評価・一括評価を問わず、「完全支配関係がある他の法人」に対して有する金銭債権については、貸倒引当

  金を設定することが出来なくなるということです。

 

 4.特別控除額の特例制度適用についての見直し

  法人が資産の譲渡をした場合に、その資産の譲渡について特別控除額の特例を複数受ける場合、複数の特例により損金算

  入できる金額の合計額は5,000万円が上限となりますが、今後はこの限度額について、完全支配関係がある法人のグループ

  全体で判定することになります。

  例えば、上記のB社・C社がそれぞれ収用による土地の譲渡を行い、B社が4,000万円・C社が3,000万円の特別控除を受

  けられるとしましょう。

  改正前であれば、それぞれが特別控除の適用を受けることで、グループ全体としては7,000万円の特別控除が可能でした。

  しかし改正後は、グループ全体での控除限度額が5,000万円となるため、差額の2,000万円については特別控除を受けるこ

  とが出来ません。

  ちなみに、損金不算入となる2,000万円については2社で按分することになります。

   <参考>損金不算入額の算式(B社):(7,000万円-5,000万円)×4,000万円÷7,000万円