間違いやすい事例集~第4回:算定基礎届・随時改定について~

実務上で間違いやすい事例シリーズ、第4回目となる今回のテーマは「算定基礎届・随時改定」についてです。

出題は〇×形式です。

設問の文章が正しければ、間違っていれば×(理由も併せてお考え下さい)とお答えください。

問題の後に解答も掲載しておりますので、是非挑戦してみて下さい。

 

<問題>

 第1問:報酬に含まれる金額①

  毎年2月に通勤定期(1年)を購入し、3月分の給与において通勤費の支給を受けている場合、標準報酬月額の算定基礎とな

  る4~6月の間に通勤手当の支給を受けているわけではない為、報酬として通勤手当を考慮する必要はない。

 

 第2問:報酬に含まれる金額②

  3月以前に支払うべき給与を支払遅滞により4月に支払ったが、これは本来4月に支給するべき金額ではないことから、報酬

  額に含める必要はない。

 

 第3問:支払基礎日数①

  家庭の事情により5月は10日しか出勤できなかった社員がいる場合、当該社員については支払基礎日数が17日に満たない

  為、5月に替えて3・4・6月の3ヶ月を算定基礎として標準報酬月額の算定を行う。

 

 第4問:支払基礎日数②

  当社は給与計算が20日締め、当月末払いのため、4月1日に入社した社員について、4月の給与は1ヶ月分の給与が支給され

  ない。ただ、支払基礎日数は17日を超えているため、4月も算定の対象月に含めて計算する。

 

 第5問:賞与を年4回支給した場合

  昨年7月からの1年間で賞与を4回支給したが、年4回の支給を社内規定で定めているわけではない。ただ、年3回を超えて

  賞与を支給した場合には標準報酬月額に含める必要があるため、当社もそれに準じた処理を行う必要がある。

 

 第6問:随時改定

  業務量の増加により残業や休日出勤が増え、この3ヶ月間の給与支給額は以前と比べて毎月5万円以上増えている。(2等級

  以上の変動に該当)

  残業代による給与の増加であっても、3ヶ月間の平均額と現在の標準報酬月額に2等級以上の差がある場合には月額変更届

  の提出が必要となる。

 

<解答>

 第1問:×

  通勤手当については「労務の対償として支給されるもの」に該当するため、報酬に含まれます。数ヶ月分を一括して支給

  されるケースもあると思いますが、支払上の便宜によるものと考えられるため、1ヶ月あたりの金額を算出して報酬に含め

  ることが必要となります。

  定期券などを現物で支給している場合にも同じ考え方となります。

 

 第2問:

  給与支払いの遅延等により、算定対象月の報酬月額に算定対象月の前月以前分の支払額(遡及支払額)が含まれている場

  合は、報酬月額の総計から遡及支払額を除いた報酬月額により標準報酬月額を算定します。

 

 第3問:×

  月給・週給制で働く従業員の場合、支払基礎日数(暦日数)が17日未満の月がある場合にはその月を除いた2ヶ月の平均で

  標準報酬月額を決定します。今回のケースでは5月が17日に満たない為、4月と6月の2ヶ月の報酬を平均して算定を行うこ

  とになります。

  時給・日給で働く従業員については、暦日数ではなく実際の出勤日数で支払基礎日数を計算することになりますので、ご

  注意ください。

 

 第4問:×

  給与支払対象期間の途中から入社することにより、入社月の給与額が1ヶ月分の額とならない場合には、対象月に含めるこ

  とで本来の等級よりも低い等級で標準報酬月額が決定されてしまうため、1ヶ月分の給与が支給されない月(途中入社月)

  については算定の対象月から除いて計算を行います。

 

 第5問:×

  年3回を超えて支給される賞与については報酬に含める必要がありますが、就業規則や賃金規定で定められているかどうか

  が重要になります。今回のケースのように社内規定に基づかずたまたま4回賞与を支給した場合には、社会保険における報

  酬ではなく賞与として扱われるため、報酬に含める必要はありません。

 

 第6問:×

  随時改定に該当するのは、「固定的賃金」の変動があった場合です。残業代や休日出勤手当については「非固定的賃金」

  に該当するため、仮に残業代の増加によって毎月の給与支給額は大幅に増えたとしても、随時改定事由には当たらない

  め月額変更届の提出は必要ありません。

  能率手当や精勤手当は「非固定的賃金」に該当しますが、家族手当や住宅手当、役職手当については「固定的賃金」に分

  類されますので、ご注意ください。