電子取引②~実務について~

今回は前回ご紹介した電子取引について実務上は何をすればよいかについてご案内していきます。

1.保存方法

(1)保存条件

電子取引により受け取った請求書や領収書等については、データのまま保存しなければならないため、その真実性を確保する観点から、次のいずれかの条件を満たす必要があります。

①タイムスタンプが付与されたデータを受領

②速やかにタイムスタンプを付与

③データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用

④訂正削除の防止に関する事務処理規程を策定、運用、備付け

※国税庁HPより『電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程』サンプルをダウンロードできます。

 

(2)事務処理規程による保存方法の例

次のような方法で保存すれば要件を満たしていることとなります。

①請求書データ(PDF)のファイル名に、規則性をもってその内容を表示する。

例) 2022年(令和4年)1月31日に株式会社山田会計から受領した110,000円の請求書

   ⇒「20220131_㈱山田会計_110,000」

  ※和暦・西暦はいずれかに統一して名称を付ける。

②「取引の相手先」や「各月」など任意のフォルダに格納して保存する。

事務処理規程を作成し備え付ける。

(3)保存先

電子データについては、ディスプレイ等に整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができるようにしておく必要があります。

電子データの授受の方法は色々であることから、電子データの格納先や保存場所については、例えば、取引の相手先ごとに取引データの授受を行うシステムが異なっている場合において、取引データの授受の方法等に応じて保存場所が複数のシステムに分かれることも可能です。

ただし、A取引先についてはaシステムに、B取引先についてはbシステムに、それぞれ取引データが格納されていることが分かるようにしておく等の管理は必要です。

(4)保存先の例

次に掲げる電子取引の種類に応じて、次のように保存することが認められます。

 ①電子メールに請求書等が添付された場合

 ・請求書等が添付された電子メールそのもの(電子メール本文に取引情報が記載されたものを含む)をサーバ等

  自社システムに保存する。

 ・添付された請求書等をサーバ等に保存する。

②発行者のウェブサイトで領収書等をダウンロードする場合

 ◎PDF等をダウンロードできる場合

 ・ウェブサイトに領収書等を保存する。

 ・ウェブサイトから領収書等をダウンロードしてサーバ等に保存する。

 ◎HTMLデータで表示される場合

 ・ウェブサイト上に領収書を保存する。

 ・ウェブサイト上に表示される領収書をスクリーンショットし、サーバ等に保存する。

 ・ウェブサイト上に表示されたHTMLデータを領収書の形式に変換(PDF等) し、サーバ等に保存する。

③第三者等が管理するクラウドサービスを利用し領収書等を授受する場合

 ・クラウドサービスに領収書等を保存する。

 ・クラウドサービスから領収書等をダウンロードして、サーバ等に保存する。

④従業員がスマートフォン等のアプリを利用して、経費を立て替えた場合

 ・従業員のスマートフォン等に表示される領収書データ(スクリーンショットによる領収書の画像データも可)

  を電子メールにより送信させて、自社システムに保存する。

(5)保存期間

電子データは帳簿書類と同様に7年間(繰越欠損金がある場合には10年間)の保存が必要です。

 

2.検索方法

(1)検索要件

電子データの保存については、次の検索機能の要件が求められています。

①取引年月日その他の日付、取引金額、取引先を検索の条件として設定することができる

②日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができる

③二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができる

また、電子データの検索は原則として一課税期間を通じて検索することができる必要があります。

 

(2)エクセル活用による検索例

電子取引の電子データを保存するための専用のソフトウェア等を使用していない場合でも、例えば、エクセル等の表計算ソフトにより、取引データに係る取引年月日その他の日付、取引金額、取引先の情報を入力した一覧表を作成することにより、エクセル等の表計算ソフトの機能によって、入力された項目間で範囲指定、二項目以上の組み合わせで条件設定の上抽出が可能であれば、検索要件のいずれの機能も満たすものと考えられます。

この方法により保存する場合には、エクセル等の表計算ソフトの一覧表の通し番号を付すなどして、一覧表から取引データを検索できるようにする必要があります。

連番

日付

金額

取引先

備考

20220131

110,000

㈱山田会計

請求書

20220210

330,000

山田総合㈱

注文書

20220228

330,000

山田総合㈱

領収書

※国税庁HPより『検索簿の作成例』サンプルをダウンロードできます。