インボイス制度の導入が間近に迫ってきておりますが、今回はインボイス制度開始後に旅費交通費等を精算される際の注意点
について改めてご紹介します。
1.帳簿の保存のみで仕入税額控除が受けられるケース
①インボイスの交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送
※飛行機は公共交通機関に含まれませんので、金額に関わらずインボイスが必要です。
②インボイスの記載事項が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引
③従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費・宿泊費・日当及び通勤手当)
この場合、保存する帳簿の記載事項について、通常必要な記載事項に加え、次の事項の記載が必要となります。
・帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるケースに該当する旨
例)①に該当する場合:「3万円未満の鉄道料金」
②に該当する場合:「入場券等」
※実務上は、「出張旅費等特例」など定型のゴム印等を作成されて運用することになるのではないでしょうか。
・仕入の相手方の住所又は所在地(一定の者を除く)
③の出張旅費等について、考えられる支払方法は「実費精算」と「一定額の支給」があります。
「一定額の支給」については、上述の通り通常必要と認められる金額の範囲であれば帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能
となります。
「実費精算」の場合、つまり従業員等が立替払いをした場合については、領収証の宛名が従業員個人になっているなど立替
精算の際に提出を受ける帳簿がインボイスの記載要件を満たしていない可能性があります。
ですが、その場合でも帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能です。
法令では上記の支払方法の違いによって制限を設ける規定はありませんので、立替払い分を実費精算した場合であっても、
当該特例の適用を受けることが出来ます。
ただし、立替精算の際に従業員等から提出を受けた帳簿に加えて「立替金精算書」の作成も必要になりますのでご留意下さ
い。上記記載項目は当然必要となります。
2.出張先等でインボイス登録をしていない個人タクシーを利用したケース
従業員等がインボイス登録をしていない個人タクシーを利用した場合については、どのように支払ったかで仕入税額控除が
変わってくるため注意が必要です。
<ケース1:従業員等が立替払いをした場合>
この場合には、上記③でご紹介した通り出張旅費等特例を適用することが可能ですので、タクシー代に係る消費税額の
全額を仕入税額控除の対象とすることが可能です。
<ケース2:法人クレジットカードで支払った場合>
この場合、ケース1とは異なり会社と従業員等の間で金銭の授受が行われず会社の銀行口座から費用が引き落とされる
ため、出張旅費等特例の対象とはならないので注意が必要です。
その場合には、タクシー代に係る消費税額を仕入税額控除の対象とすることは出来ません。
(経過措置期間中は一定割合控除可能)