1.改正の背景
パートタイムで働いている配偶者の方々が,年間の給与収入 金額が103万円以下となるよう労働時間を抑える、いわゆる『103万円の壁』が問題とされていました。また,生産年齢人口の減少により人手不足と感じている企業が多い中で,最低賃金の引上げに伴い,こうした問題が更に強まる可能性もあることから、平成29年度税制改正で,本問題の課題に対応するための措置として改正が行われ、『103万円の壁』が『150万円の壁』へと改められます。
2.改正について
(1)配偶者控除
合計所得金額が1,000万円を超える納税者については,配偶者控除を適用しないこととされます。
また,合計所得金額が900万円を超える納税者については、所得金額に応じて段階的に配偶者控除額が減額されます。控除額につきましては下記(3)をご参照下さい。
なお、平成29年までは配偶者控除の適用に関しては合計所得金額の制限はありません。
(2)配偶者特別控除
配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額が38万円超123万円以下(平成29年までは38万円超76万円未満)に引き上げられます。これにより給与収入で150万円以下であれば38万円の所得控除が受けられます。これが今回の改正による、いわゆる『150万円の壁』となります。
また、合計所得金額が900万円を超える納税者については、所得金額に応じて配偶者特別控除額が段階的に減額されます。控除額につきましては、下記(3)をご参照ください。
なお、納税者の合計所得金額が1,000万円を超える場合には現行制度と同様に適用はありせん。
(3)控除額のまとめ
(カッコ)内の数字は個人住民税の場合の控除額です。 (単位:万円)
配偶者の 合計所得金額 | 給与収入に換算した金額 | 納税者本人の合計所得金額『給与収入換算額』 | |||
900以下 『1,120以下』 | 900超950以下 『1,120超 1,170以下』 | 950超1,000以下 『1,170超 1,220以下』 | |||
配偶者控除 | 38以下 | 103以下 | 38(33) | 26(22) | 13(11) |
老人控除対象配偶者(70歳以上) | 48(38) | 32(26) | 16(13) | ||
配偶者特別控除 | 85以下 | 150以下 | 38(33) | 26(22) | 13(11) |
90以下 | 155以下 | 36(33) | 24(22) | 12(11) | |
95以下 | 160以下 | 31(31) | 21(21) | 11(11) | |
100以下 | 166.8未満 | 26(26) | 18(18) | 9(9) | |
105以下 | 175.2未満 | 21(21) | 14(11) | 7(7) | |
110以下 | 183.2未満 | 16(16) | 11(11) | 6(6) | |
115以下 | 190.4未満 | 11(11) | 8(8) | 4(4) | |
120以下 | 197.2未満 | 6(6) | 4(4) | 2(2) | |
123以下 | 201.6未満 | 3(3) | 2(2) | 1(1) | |
123超 | 201.6以上 | 適用なし |
(4)その他関連する改正
①配偶者に係る扶養親族等の数の計算方法の変更
源泉徴収税額表の甲欄を使用して給与等に対する源泉徴収税額を求める際は、配偶者が「源泉控除対象配偶者」に該当する場合には、扶養親族等の数に1人を加えて計算することとされます。
「源泉控除対象配偶者」とは、納税者(合計所得金額が900万円以下の方に限る)と生計を一にする配偶者で、かつ、合計所得金額が85万円以下である人です。
また、生計を一にする配偶者が障害者に該当する場合には、扶養親族等の数に1人を加えて計算することとされます。
②給与所得の扶養控除等申告書等の様式変更
今回の改正により扶養控除等申告書の様式が平成30年より変更となります。
また、従来の「保険料控除申告書 兼 配偶者特別控除申告書」は、「保険料控除申告書」と「配偶者控除等申告書」に分けられ別様式となります。
3.社会保険料の壁は継続
配偶者控除及び配偶者特別控除について改正がなされましたが、社会保険の扶養に入れるいわゆる『130万円の壁』はそのままです。税制改正により配偶者特別控除の適用範囲が広がり『103万円の壁』は解消されましたが、今回の改正が本領を発揮するためには、この『130万円の壁』も解消されることが次の課題と言えます。