令和7年度改正により、所得税の基礎控除額等の見直しや年金制度改正法案が提出され、いわゆる『年収の壁』に変化がありました。そこで今回は改正による『年収の壁』の変化について紹介したいと思います。
1.所得税の『年収の壁』
所得税には「103万円の壁」「150万円の壁」があります。今回の改正で基礎控除額が年収に応じて10~47万円の引き上げ、また、給与所得控除額の最低保障額が10万円引き上げられました。
なお、コネクトR7年4月号にて年収別の基礎控除額の引き上げ額一覧を紹介しておりますで、ご参照願えればと思います。
(1)103万円の壁の変化
こちらの壁は本人及び子等の扶養者へ影響があります。
①本人への影響
改正前は給与収入が103万円超となると本人に所得税が課されましたが、今回の改正により「160万円の壁」へ見直されました。
令和7年から給与収入が160万円超から所得税が課されます。
②子等の扶養者への影響
改正前は給与収入が103万円超となると、アルバイト等として働く子等(被扶養者)は親等(扶養者)において扶養控除の適用ができなくなりますが、今回の改正により「123万円の壁」へ見直されました。
令和7年から給与収入が123万円超から扶養控除の対象から外れます。
なお、19歳以上23歳未満までの大学生等の特定扶養控除については188万円超(150万円超~188万円以下の間は収入に応じて控除額が逓減)から外れます。
(2)150万円の壁の変化
こちらはパート等として働く配偶者の給与収入が150万円超となると、配偶者特別控除の控除額が満額の38万円から逓減していく壁でしたが、こちらが今回の改正により「160万円の壁」へ見直されました。
なお、配偶者特別控除自体の見直しではなく、給与所得控除の最低保証額が10万円引き上げられたことによるものです。
2.社会保険料の『年収の壁』
社会保険には「106万円の壁」「130万円の壁」があります。
今回の改正で106万円の壁が無くなります。会社の企業規模によってパート等の短時間労働者の社会保険の加入要件が定められていますが、その加入要件の1つである賃金要件の撤廃がされます。
賃金要件は月額88,000円以上(年換算で約106万円)で要件を満たすことになりますが、こちらが今回の改正により撤廃となります。撤廃時期は年金制度改正法の公布から3年以内の政令で定める日からです。
他に企業規模要件の撤廃などもありますが、全ての改正が適用となる令和17年10月1日からは、どの会社でも2ヶ月超継続して週20時間以上勤務するパート等従業員は、全員が社会保険に加入することになります。
3.『年収の壁』の一覧
年収の壁 | 改正前 | 改正後 |
所得税が発生する給与収入 | 103万円超 | 160万円超 |
扶養控除から外れる給与収入 | 103万円超 | 123万円超 |
特定扶養控除から外れる給与収入 | 103万円超 | 188万円超 |
社会保険へ加入する賃金要件の給与収入 | 106万円超 | 撤廃 |