国税庁が令和7年7月より、全国の相続税の税務調査において、人工知能(AI)を活用して選定した事案への『AI税務調査』を始める。AIにより、申告漏れ等の税務リスクが高く調査の必要性がある事案を効率的に選定し、これまで以上に深度ある調査を行うとのことです。
1.AI選定の対象
令和5年以降に全国の税務署に提出された全ての相続税申告書をAI判定の対象とし、税務リスクに応じてスコア付けをして、税務調査の要否等を判断します。
令和5年分の相続税の申告書の提出に係る被相続人数は155,740人で、課税割合(被相続人のうち相続税申告書の提出割合)は9.9%になります。相続税の申告件数等の増加に伴い調査必要度が高い事案も増えているようです。AIの活用により調査対象の選定事務が効率化され、調査可能となる事案の増加が期待されるとして、より的確な税務調査を推進するとのことです。
2.『0から1』の間で税務リスクをスコア付け
相続税の税務調査におけるAIの活用方法は次の流れです。
①国税庁が、全国の税務署から納税者等より提出があった全ての相続税申告書のデータを収集。
②各相続税申告書データの1つずつに、申告漏れ等の税務リスクが想定されるレベルとしてスコア付け。
スコアは0から1の間の0.01以下等の単位で細かく付ける。
③国税庁は、スコア付けした各相続税申告書データを各所管の国税局等に戻す。
④現場の各国税局等はスコア等に基づき、各事案について、税務調査の要否、そして税務調査を行う場合でも実地調査又は電話等による簡易な調査を行うかなどの対応を判断する。
なお、スコアが0であるなど、税務リスクが極めて低いとAIにより判定された相続税申告書データについては、国税庁において税務調査の必要性がないものと判断することがあるようです。
3.過去の調査事績から申告漏れ等の可能性を判定
AIがどのように相続税の申告漏れ等の税務リスクを判定し、スコア付けしているかという点については、過去の調査事績を踏まえ、これまでに申告漏れ等が生じた相続税申告書や財産債務調書等の法定調書などの情報から申告誤りの傾向を分析します。
分析結果に基づき、全国から集めた各相続税申告書データにおいて申告漏れ等が生じている可能性をスコアとして表示する。