中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)は、掛金総額が800万円に達するまで積み立てることが可能であり、掛金(5,0
00円~200,000円の範囲で選択可能)は、損金算入が可能です。
40ヶ月以上の掛金納付月数があれば任意解約時の支給時は100%となるため、掛金が一切目減りすることなく全額が戻ってき
ます。それに加えて「月払」→「年払」への切り替えも可能であることから、節税(実際には課税の繰り延べなのですが)と
して使い勝手が良く、それを目的に加入している企業様も多いのではないでしょうか。
しかし、そんな倒産防止共済も令和6年度税制改正により一定の制限が加えられることとなりました。
1.改正の背景
上述の通り、倒産防止共済には一定の節税(課税の繰り延べ)効果があります。
解約して掛金が戻ってきた時には全額が収入計上されますが、そのタイミングで退職金の支給など出口を用意することで、
資金調達だけでなく課税所得を抑えることも出来ます。
しかし、このように節税効果を目的とした「支給率が100%になったタイミングで解約しその後すぐに再加入を行う」企業が
増えてしまったことで、こうした行動が共済の本来の制度目的に沿わないと判断されてしまったわけです。
実際、共済金貸付の発生は減少している一方で加入が増加しているという統計も示されています。
2.改正内容
税制改正大綱には以下のように記載されています。
『特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例における独立行政法人中小企業基盤整備機構が行う中小企業倒産防止
共済事業に係る措置について、中小企業倒産防止共済法の共済契約の解除があった後同法の共済契約を締結した場合
には、その解除の日から同日以後2年を経過する日までの間に支出する当該共済契約に係る掛金については、本特例の
適用ができないこととする(所得税についても同様とする。)。』
※上記の改正は、令和6年10月1日以後の共済契約の解除について適用する。
つまり、令和6年10月1日以後に契約を解除して掛金の返金を受けた場合、その後2年間は再加入しても支払った掛金の損
金算入が出来ないということになります。
3.現在の加入者が検討すべきこと
①令和6年9月までに掛金納付月数が40ヶ月を超える場合
その場合には、9月までに一度解約して再加入するかどうかを検討してはいかがでしょうか。
②令和6年9月までに掛金納付月数が40カ月に満たない場合
この場合には、焦って解約しても支給率が100%に満たないので、基本的にはそのまま掛金支払を継続するのが良いので
はないでしょうか。
解約手当金スキームを活用している企業が令和6年10月1日以降に現契約を解約した場合、
イ:2年間は掛金が損金算入出来ない
ロ:再加入後の払込期間が40ヶ月以上でないと、解約した際の支給率が100%を下回ってしまう
上記の理由から、現在と同じ運用(解約→再加入→支給率100%で解約)をしようと考えた場合に要する期間は「2年+40
ヶ月(合わせて5年4ヶ月)」となります。