6月、国税庁は「株式公開買付(TOB)成立後、上場廃止となった株式の買取りに係る所得税(株式等譲渡所得)の申告もれ
等」の確認について注意喚起を出しました。
1.申告もれ件数は199件、追徴税額が3,000万円を超えるケースも
TOBの買付総額が高額となるケースがあり、上場廃止後の株式譲渡に係る申告漏れの増加が懸念されていた所、国税当
局が実施した調査379件のうち申告もれが199件あったと発表しました。
調査の対象となったのは、株式公開買付(TOB)成立後、上場廃止となった株式をTOBに応じなかった株主が保有す
る株式について、TOBによる買付者などが株式等売渡請求や株式併合等を行い、強制的に株式を買い取られた場合の株
式買取りに係る株式譲渡益の申告がもれていたケースでした。
国税当局は、株式を買い取った企業から、税務署に提出された「株式等の譲渡の対価の支払調書」(法定調書)に基づ
き、令和2年から同4年までの間の上場廃止後の株式買取りを対象に、納税者に対し379件の調査等を行い、申告漏れなど
の非違件数は199件、申告漏れ所得金額は4億7,495万円、追徴税額は7,258万円で、申告1件当たりの追徴税額は36万円
となりました。
中には、1億円を超える多額の譲渡益が生じたにもかかわらず、無申告となっていたケースもありました。
(申告漏れ所得金額:1億8,216万円、追徴税額:3,151万円)
2.申告の注意点
TOB成立後に上場廃止した株式が買い取られた場合は、
- 上場株式の譲渡ではなく、証券会社を通さない相対取引となるため、特定口座内での損益計算が出来ません。
- そのため、株式の譲渡代金(買取価額)から取得費等を差し引いた譲渡益が生じる場合、株式の譲渡所得に係る確定申告が必要となります。
- また、他の上場株式の譲渡所得との損益通算や、譲渡損失の繰越控除ができないことにも注意が必要です。
国税庁では、申告もれがあった場合には、自主的な期限後申告等を行ってほしいとしています。
その上で、申告が必要と見込まれるにもかかわらず無申告となっている者に対しては、積極的に調査等を行うとしています。