ここ数年の税務調査の件数はコロナ禍の影響により相当数少なくなっています。実地調査では納税者との接触が不可欠でありますが、納税者側で感染防止のためテレワーク等による関係者の不在、調査に適した場所の確保等の問題があり、調査件数を減らす(もしくは延期)せざるを得ず、調査を行ったとしても、要望があれば密を避けるため調査官の人数を減らす、調査官と納税者の接触時間を短くするといったもののようでした。また、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令されている状態では、実際に納税者の理解を得ながら調査を行うことは難しかったと思います。
【法人税調査の事績】
| 平成30事務年度 | 令和元事務年度 | 令和2事務年度 |
実地調査件数 | 99千件 | 76千件(77%) | 25千件(25%) |
追徴税額 | 1,943億円 | 1,644億円(85%) | 1,207億円(62%) |
1件当たりの追徴税額 | 196万円 | 216万円(110%) | 483万円(246%) |
※1 事務年度の対象は各年7月から翌年6月です。
※2 ( )は平成30年事務年度を基準とした場合の比率です。
【不正発見割合の高い業種10業種(法人税)】
順位 | 業種目 | 不正発見割合(%) | 順位 | 業種目 | 不正発見割合(%) |
1 | バー・クラブ | 53.7 | 6 | 一般土木建築工事 | 36.0 |
2 | 外国料理 | 52.0 | 7 | 職別土木建築工事 | 36.0 |
3 | 美容 | 37.5 | 8 | 中古品小売 | 33.3 |
4 | 医療保険 | 36.7 | 9 | 医療関連サービス | 33.3 |
5 | 鮮魚魚介そう卸売 | 36.2 | 10 | 土木工事 | 33.2 |
「令和2事務年度法人税等の調査事績の概要」によると、①新型コロナウィルスの影響により、調査件数は減少するも調査1件当たりの追徴税額は増加したこと、②悪質な納税者には厳正な調査を実施する一方で、その他の納税者には簡易な接触を実施したことが記載されています。
不正発見割合の高い業種は現金決済の多い業種が比較的上位になっています。
今年実際に当事務所で行われた税務調査では、コロナ感染状況が落ち着くまで調査の延期要請、コロナ感染者(濃厚接触者含む)が発生したことによる調査の延期や、リモートによる実地調査がありました。
調査の内容としましては業種にもよりますが、成果物から生じたスクラップ等の端材売上(雑収入)が以前の調査と比べて重点的に確認されていると感じました。建設業や製造業などは有価物が生じやすい業種でもありますので、ご注意下さい。