消費税の仕入税額控除については、現行の区分記載請求書等保存方式では『3万円未満の課税仕入れ』については一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除可能が可能ですが、インボイス制度では原則、3万円未満であるか否かにかかわらず、売手交付のインボイス(請求書等)がなければ仕入税額控除ができなくなります。
1.インボイス制度開始後は3万円未満の取引もインボイスが必要
(1)3万円未満の課税仕入れの帳簿の保存規定は廃止
現行制度では税込支払金額が3万円未満の場合には、請求書等の保存をしなくても、一定事項を記載した帳簿を保存しておけば、仕入税額控除が可能です。
しかし、インボイス制度開始後は、現行のこの3万円未満の規定は廃止されるため、金額に関わらず仕入税額控除の適用を受ける場合には、原則、買手は一定の事項を記載した帳簿及びインボイスの保存が必要となります。
(2)インボイス制度下でも帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合
インボイスの交付を受けることが困難な場合として掲記された取引に限り、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。
交付を受けることが困難な取引とは、インボイスの交付義務が免除される「3万円未満の公共交通機関による旅客の運送」や「3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等」などです。
帳簿のみの保存が認められる場合に記載が求められる事項は、①課税仕入れの相手方の氏名、②取引年月日、③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)、④対価の額、⑤帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるいずれかの仕入れに該当する旨、⑥仕入れの相手方の住所又は所在地(一定の者を除く)です。
2.クレジットカードによる購入
クレジットカードによる購入の場合には、クレジットカード会社から受け取る利用明細の保存だけでは消費税の仕入税額控除をすることはできません。
現行制度では、3万円未満の取引であれば帳簿に一定事項を記載し保存することで仕入税額控除をすることができますが、3万円以上の場合には、取引相手である店舗等から受け取る領収書や利用明細等(仕入税額控除の要件を満たす記載があるもの)の保存が必要です。
インボイス制度開始後においても、クレジットカード会社が交付する明細は、取引相手である店舗等が交付したものではないため、現行制度と同様に、クレジットカード会社の明細を保存するだけでは仕入税額控除をすることはできません。
インボイス制度下では、仕入税額控除の適用を受けるためには、3万円未満の取引分も含め、取引相手である店舗等からインボイスの記載事項を満たす領収書等を受け取り保存する必要があります。
消費税(仕入税額控除)の 保存書類 | 令和5年9月以前 区分記載請求書等保存方式 | 令和5年10月以降 インボイス制度 |
カード会社発行のクレジット明細 | 不要 | 不要 |
クレジット利用店舗等からの領収書等 | 必要 (3万円未満は不要。一定事項記載の帳簿の保存で可) | 必要 |