実務上で間違いやすい事例シリーズ、第5回目となる今回のテーマは「労働保険・年度更新」についてです。
出題は〇✖形式です。
設問の文章が正しければ〇、間違っていれば✖(理由も併せてお考え下さい)とお答えください。
問題の後に解答も掲載しておりますので、是非挑戦してみて下さい。
<問題>
第1問:労働保険の対象となる労働者とは?
労働保険は労災保険と雇用保険を合わせたものですが、それぞれが労働者を対象としています。
この労働者に含まれる範囲は労災保険・雇用保険ともに一緒である。
第2問:役員は労災保険に入れる?
労災保険は労働者の業務または通勤による災害に対して保険給付を行う制度のため、労働者ではない、役員は労災保険に加入することはできない。
第3問:賃金総額に含まれるもの①
労働保険料の計算の基礎となるものは労働者の賃金です。新型コロナウイルスによる影響で休業手当を支給したことにより雇用調整助成金の適用を受けた会社も多いのではないでしょうか?
それでは、この休業手当は新型コロナウイルスによる特別な事情によるものですから、労働保険料の計算の対象である賃金に含めなくてもよい。
第4問:賃金総額に含まれるもの②
第3問のとおり労働保険料の計算の対象となるものは賃金ですので、退職時に支給される退職金は賃金ではないため含まれません。
それでは、支給される予定の退職金を原資として、労働者が在職時に退職金相当額を賃金に上乗せして前払いで支給を受けた場合、この前払いをした退職金相当額は退職金が原資であることから、労働保険料の計算となる賃金に含めなくてもよい。
第5問:分割納付の可否
労働保険料は概算保険料額が40万円以上から分割納付することが可能です。
当社は今年の概算保険料額が30万円でしたが、年度更新を労働保険事務組合に委託していることから、金額に関わらず40万円未満であっても分割納付することができる。
<解答>
第1問:×
労働者とは、職業の種類を問わず、事業に使用される方で労働の対価として賃金が支払われる方をいいます。
労災保険と雇用保険では労働者の範囲が異なります。労災保険の労働者の範囲の方が広く、雇用保険の対象となる労働者は1週間の所定労働時間20時間以上、31日以上雇用見込であるなどの要件がありますが、労災保険の場合の労働者はそのような要件はなく、国内で労働しているすべての労働者が対象となります。
第2問:×
役員も一定の要件を満たせば加入することが可能です。労働保険事務組合に労働保険の事務処理を委託している場合で、事業規模が中小規模であり、その業務の状況からみて労働者に準じて保護することが適当であると認められる場合には、役員、事業主や家族従事者でも任意で特別加入することができます。
第3問:×
休業手当は賃金の一部であるため賃金総額に含まれます。その発生原因が新型コロナウイルスによる場合であってもです。なお、賃金であることから休業手当に対しては所得税・住民税も課税されます。こちらについてはコネクトR2.7月号にて紹介しています。
第4問:×
退職を事由として支給される退職金は賃金総額には含まれませんが、それが在職時に前払いとして給与や賞与に上乗せして支給された場合には、あくまでも賃金とされるため、例え退職金相当額だとしても賃金総額に含まれます。
第5問:○
労働保険事務組合に労働保険の事務処理を委託している場合には、概算保険料の金額に関わらず納付を3回に分割して納付することができます。
但し、労働保険料と一緒に納付する一般拠出金については分割納付することはできません。