実務上で間違いやすい事例シリーズ、第3回目となる今回のテーマは「相続の基本知識」です。
今回は特に遺言に関する問題を中心に出題しています。出題は5題、全て○×問題です。
<問題>
第1問:私は、妻と子供が2人おりますが、生前お世話になった友人にも遺産をあげたいと考え、遺言書に友人の名前を
入れました。この友人は遺産を受け取れる?
第2問:遺言を作成するにあたり、スマートフォンの動画撮影機能を使い、遺言内容を読み上げる形で遺言を作成しました。
この遺言は法律上も有効である?
第3問:父は生前に遺言書を作成していました。父の死後、家族(相続人)で話し合った結果、遺言書の内容に従わないで
遺産を分ける事に決めました。これは遺言書の内容に反しているので認められない?
第4問:父の死後、金融機関から多額の借入金があることが判明しました。
この借入金は相続人が引き継いで返済する必要がある?
第5問:相続にあたり、遺言書が2通見つかりました。遺言書Aは日付が令和2年5月1日の公正証書遺言、遺言書Bは日付が
令和2年6月10日の自筆証書遺言でした。この場合、日付の新しい遺言書Bが有効となる?
<解答>
第1問:◯
法定相続人で無くても、遺言書に記載があれば相続財産を受け取ることができます。これを「遺贈」といいます。
但し、相続人には「遺留分」という一定割合の相続分が法律で保障されています。遺留分を侵害された相続人は、
遺留分侵害額の請求を行う事が出来ます。
第2問:×
遺言は、法律で定められた様式に従って書面として残さなければならず、動画、ビデオ等での遺言は認められません。
通常は「自筆証書遺言」又は「公正証書遺言」により作成します。
第3問:×
遺言書は、故人の最後の意志ですから、最大限尊重される必要があると考えられていますが、相続人や、遺言書で遺産
を取得するように指定されていた人全員が同意すれば、遺言書とは 違う内容で遺産分割をすることが可能です。
第4問:×
相続では、通常はプラスの財産(現預金、不動産、株式等)だけでなく、マイナスの財産(借入金等)も引き継がなけ
ればなりません。従って、プラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合、「相続放棄」を行う事をおすすめします。
相続放棄をした場合、財産を相続する事も出来ませんが、同時に借金を返済する義務も無くなります。
尚、相続放棄は、相続開始から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要がある点に注意が必要です。
第5問:◯
イメージとして公正証書遺言の方が強力な効力がありそうですが、自筆証書遺言でも法律上の要件をクリアしていれば、
有効となります。設問の場合は、遺言書Bの方が新しい為、原則として、新しい遺言である遺言書Bが優先します。
但し、2つの遺言書で内容的に矛盾するものでなければ、どちらの遺言も有効になります。
例)遺言書Aで「土地は妹に相続させる」とあり、遺言書Bで「建物は姉に相続させる」とあれば、内容的に矛盾する
ものではありませんから、どちらの遺言書も有効となります。