このコーナーでは、実務の上で間違いやすい事例などをクイズ形式でお届けしていきます。
記念すべき第1回のテーマは「経済的利益」です。
出題は全5題、全て〇×問題です。
設問の文章が正しければ〇、間違っていれば×(理由も併せてお考え下さい)とお答え下さい。
問題の後に解答も掲載しておりますので、是非挑戦してみて下さい。
<問題>
第1問:長期間にわたり遠方の現場で工事を行うことになった自社の従業員。
とても自宅から通うことは出来ません。
そこで会社は現場近くにマンションを借り、従業員が現地で生活出来る環境を整えました。
従業員からは家賃を貰わず、無償で住まわせる予定です。
この場合、賃借料相当額に該当する金額を経済的利益として従業員の給与として課税しなくてはならない。
第2問:昨今の情勢を鑑み、社内の事務職員について原則在宅勤務を行うことになりました。
ただ、私用のパソコンを用いて仕事をすることに難色を示す従業員がいたことから、必要なOA機器を会社
で全て買い揃え、在宅勤務を行う従業員全員に支給しました。
従業員がその機器を処分することは認めておらず、業務に使用しなくなった時には会社に返却することに
なっています。この場合、従業員に支給したOA機器については現物給与として給与課税する必要がある。
第3問:社長が自らの万が一に備えて、個人契約で死亡保険に加入することになりました。
死亡保険金の受取人は社長の奥様です。
「会社の為の保険だから」と、毎月の定額保険料は会社で支払っています。
この場合、社長個人が負担すべき費用を会社が負担していることになるので、毎月の保険料を経済的利益
として給与課税する必要がある。
第4問:繁忙期を迎えた社内では、今日も従業員の皆が残業してくれています。
従業員に対する感謝の気持ちから、社長は彼らに夕飯の出前を取ってあげることにしました。
残業した社員一人につき1日700円程度で、繁忙期が終わるまで毎日続けるつもりです。
この間支給した食事代については、従業員の給与として課税する必要がある。
第5問:大型台風の直撃により従業員の家屋が大きく損壊してしまいました。
精神的に落ち込んでいる従業員のために、補修費用500万円を貸し付けることにしました。
毎月10万円ずつ返済する約束を書面で交わしたため、社長は当該従業員への貸付に対する利息は取らない
ことにしました。
この場合、返済が完了するまでの利息相当額は従業員の給与として課税する必要がある。
<解答>
第1問:×
仕事を行う上で勤務場所を離れて住むことが困難な使用人に対して、仕事に従事させる都合上社宅や寮を
貸与する場合には、無償で貸与しても給与として課税する必要はありません。
第2問:×
形式上、従業員に事務用品等を「支給」した場合であっても、支給を受けた事務用品等を従業員が自由に
処分できず、業務に使用しなくなったときは返却を要する場合には、「貸与」とみて差し支えありません。
第3問:〇
役員等が負担すべき個人的費用を会社が負担した場合、その費用負担額を給与として課税する必要があります。
役員に対して継続的に供与される経済的利益の内、供与される利益の額が毎月概ね一定であるものは定期同額
給与に該当するため、今回のケースもこれに該当します。
第4問:×
残業又は宿直・日直をした者に対し、これらの勤務をすることにより支給する食事については、給与として
課税しなくて差支えありません。
第5問:×
災害、疾病等により臨時的に多額の資金を要することとなった役員又は使用人に対し、その資金に充てるため
に貸し付けた金額につき、その返済に要する期間として合理的と認められる期間内に受ける経済的利益につい
ては給与課税する必要はありません。