新型コロナウイルス感染症の影響がどこまで長期化するのか不透明な状況が依然として続いています。昨年制定された新型コロナ税特法では、新型コロナウイルス感染症等の影響による収入の著しい減少があった一定の事業者(特例対象事業者)を対象に、「消費税の課税選択の変更特例」が設けられています。売上が大きく減少し、消費税の還付を受けたい事業者も多いと思われます。個人事業主の確定申告時期が近付いていることもありますので、今一度この制度をご紹介したいと思います。
1.制度概要
新型コロナ等の影響により、令和2年2月1日から令和3年1月31日までの間に事業としての著しい減少のあった「特例対象事業者」が、税務署からの承認を受けることで、特定課税期間(新型コロナ等の影響で事業としての収入の著しい減少があった期間内の日を含む課税期間)以後の課税期間について、課税期間のスタート後でも、課税事業者の選択適用又は選択不適用が可能となる制度です。
『簡易課税制度の選択適用又は選択不適用』と混同されるケースが見られますが、それとは別物であるということをまずご理解下さい。
「現在簡易課税制度を選択しているが、原則課税に切り替えたい」という場合はこの制度の対象とはなりません。
確かに上記制度と同じく税務署からの承認を受けることで(簡易課税⇔原則課税)の切り替えは可能ですが、その根拠となるのは『災害等による消費税簡易課税制度選択(不適用)届出に係る特例承認申請手続き』になります。
こちらは既存の制度であり、「災害その他やむを得ない理由が生じたことにより被害を受けた事業者が、災害等の生じた日の属する課税期間等について、簡易課税制度の適用・不適用を受けることが必要となった場合の手続き」になります。
コロナによる深刻な影響が「災害その他やむを得ない理由」に該当すると示された為です。
遡って変更が可能であるという点においては同じですが、そこに至るまでの申請方法が異なるということです。
2.申請書等の提出期限
課税事業者を選択する場合と課税事業者の選択をやめる場合とで期限が異なります。
(1)課税事業者を選択する場合(免税→課税)
➡特定課税期間の末日の翌日から3ヶ月(法人は2ヶ月)を経過する日
(例:個人であれば3月31日、3月決算法人であれば5月31日となります。)
(2)課税事業者の選択をやめる場合(課税→免税)
①特定課税期間から課税選択をやめる場合
②特定課税期間の末日が2年経過日以後に到来し、その特定課税期間の翌課税期間から課税選択をやめる場合
➡特定課税期間に係る確定申告書の提出期限
③上記以外の場合
➡「2年経過日の属する課税期間の末日」又は「課税選択をやめようとする課税期間の末日」のいずれか早い日
※2年経過日とは、課税事業者選択届出書を提出した場合における強制適用期間が終わる日のことを指しています。
3.みなし承認について
上記特例の適用の前提となる税務署からの“承認”について特定課税期間の末日までに申請書等を提出した場合、特定課税期間の末日の翌日から2ヶ月を経過する日までに承認(却下の処分)がなかったときは承認があったものとみなされる“みなし承認”の対象となります。
一方で、その提出が特定課税期間の末日の翌日以後となった場合には、みなし承認の対象外となり、事後的に承認又は却下の処分の旨が書面で通知されることになっています。
4.特定課税期間以後の課税期間
この特例制度は、法令上、特定課税期間のみでなく「特定課税期間以後の課税期間」も適用対象とされているため、”1年間のみ課税事業者を選択すること”や”1年間のみ課税事業者の選択をやめること”も可能です。
※間違いやすいポイント
令和2年に(免税→課税)の適用を受けた事業者が、同制度を利用し令和3年に再び(課税→免税)へ変更しようとする場合、申請書の提出期限はいつになるでしょうか?
このケースでは上記(2)③に該当するため、令和3年12月31日が提出期限となります。
お間違いないようご注意下さい。