平成30年3月20日、建設業の働き方改革を推進すべく国土交通省は
①長時間労働の是正、②給与・社会保険、③生産性向上
を柱にした「建設業働き方改革加速化プログラム」を策定しました。
コネクトではこれから3回にわたり、この「建設業働き方改革加速化プログラム」の内容について
ご紹介していきたいと思います。
第1回目となる今回は、建設業働き方改革加速化プログラムの全体像についてご紹介したいと思います。
1. 策定の背景
少子化による人口減少に伴い生産年齢人口が確実に減少していく中、およそ10年後には団塊世代の
大量離職が見込まれておりますが、それを補うべき若手入職者の数は全く足りていません。今の業界
の状況のままでは半分も補うことが出来ないのではないかという声もあります。しかしながらそんな
状況とは裏腹に、建設投資全体の方はそれほど縮小しないだろうと見込まれています。近年頻発して
いる大規模災害に備える為の防災・減災対策工事、老朽化した社会インフラのメンテナンス工事、20
年以上経過したマンションの大規模修繕工事等・・・。こうした様々な需要に対応できる担い手の確保
・育成が急務となっているのです。こうした危機感を背景に、働き方改革の取組みをより一層前に進め
る為に、この「建設業働き方改革加速化プログラム」が策定されました。
2. 具体的な施策
①長時間労働の是正
・週休2日制の導入を後押しする
・各発注者の特性を踏まえた適正な工事設定を推進する
②給与・社会保険
・技能や経験にふさわしい処遇(給与)を実現する
・社会保険への加入を建設業を営む上でのミニマム・スタンダードにする
③生産性向上
・生産性の向上に取り組む建設企業を後押しする
・仕事を効率化する
・限られた人材・資機材の効率的な活用を促進する
・重層下請構造改善のため、下請次数削減方策を検討する
3. 3本柱が推奨される理由
①建設業は働きすぎ?
建設業は全産業平均と比較して、年間で300時間以上も多く働いているという統計があります。
その最たる要因が、週休2日をとれていないことなのです。平日も週末も関係なく工事を行ってい
る光景を目にすることも珍しくありません。さらに、労働時間は多いのに他の業界と比べると賃金
は低いという統計が出ています。おまけに、社会保険への加入状況も決して良いとは言えません。
特に下請企業になればなるほどそれは顕著です。こうした現状では、他の業種と若手獲得競争をし
ても思ったように人が集まらない、という現実にも納得せざるを得ないですよね。
②10年後の人手不足を乗り越えられるのか?
建設業界内においては、社会保険未加入問題が大きく取り沙汰されており、従業員の将来に対する
不安が取り除かれなければ、今後ますます人手は減っていく一方になることでしょう。
「うちの会社は大丈夫だ。福利厚生には力を入れているし、新卒採用に困ったこともない」
とお思いになる経営者様もいらっしゃることかと思います。しかし、同業他社と差別化を図って生き残
れたとしても、それで済むお話ではないのです。冒頭にも触れましたが、もはや業界全体で変わってい
かなければ10年後に訪れるとされる深刻な人手不足を乗り越えることは出来ないのです。
となれば、業界全体を挙げてこの状況をどうにかしなければなりませんよね。
③時短のためには仕事の効率化が必須?
働き過ぎだからもっと休日を増やそう!そう思い立って週休2日で工期を設定しようとすると今まで
よりも工期が伸びてしまいますよね。
「建設業全体の事情ですので、何卒ご理解の程よろしくお願い致します」
これが通れば苦労はないかもしれませんが、発注者にしわ寄せが集中してしまうようでは不公平ですよね。
工期を出来る限り変えずに工事の内容(密度)を濃くする、建設企業側の努力が不可欠です。
以上の背景から、長時間労働の是正や給与・社会保険の待遇改善及び生産性向上に向けて大きく動き始めた
というわけなのです。
いかがでしたでしょうか?
次号以降では、これらの具体的取り組みについて詳しく掘り下げてご紹介していく予定です。
どうぞお楽しみに!