社宅や社員寮用の建物の取得費は、消費税の課税対象となっています。但し、課税売上高が5億円を超える会社や課税売上割合が95%未満の会社が、個別対応方式により仕入控除税額の計算を行う場合には、全額が控除の対象にならないこともありますので、ご注意が必要です。それは従業員等から社宅家賃を徴収している場合です。
1.社宅家賃の徴収の有無により用途区分に違い
社宅を有償で従業員等に貸し付ける場合には、会社の住宅家賃収入は非課税売上であるため、建物の取得費は「非課税売上げにのみ要するもの(非課税売上対応の課税仕入れ)」に該当します。そのため,建物の取得費の全額が仕入税額控除の対象にならないことになります。
他方、従業員に対し無償で貸し付ける場合には、資産の譲渡等に該当しないことから消費税は不課税であり、建物の取得費は「課税売上げと非課税売上げに共通して要するもの(共通対応の課税仕入れ)」に区分されます。この場合には、建物の取得費に課税売上割合を乗じて算出した金額が仕入税額控除の対象になります。
2.維持費に係る用途区分も同様
社宅や社員寮の維持費(修繕費、備品購入費等)に係る用途区分についても考え方は同様となります。従業員等から賃料を徴収している場合は「非課税売上げにのみ要するもの」となり、無償で貸し付ける場合は「課税売上げと非課税売上げに共通して要するもの」に分類することになります。
3.まとめ
社宅用建設等の取得費に係る用途区分の分類
賃料徴収の有無 | 用途区分 | 仕入税額控除の対象 |
従業員等から賃料(非課税売上)を徴収する | 非課税売上対応の課税仕入れ | なし (全額が仕入税額控除対象外) |
従業員等に対し無償で貸付け | 共通対応の課税仕入れ | 課税売上割合に応じた金額のみ が仕入税額控除対象 |
上記のように個別対応方式を選択している場合には、社宅家賃の徴収の有無により、仕入税額控除の金額が異なります。なお、社宅を従業員等に無償で貸付けた場合には、現物給与に該当し、従業員等への給与課税の対象になりますので、こちらもご注意が必要です。