~従業員が退職した場合の住民税の手続きについて~

   東京では桜の開花宣言も発表され、春らしい陽気の日も多くなってきましたが、この時期は出会いと別れの多い季節でもあります。節目の時期でもあり、人の出入りも多くなりますね。

 今月号では、従業員が退職した場合の住民税の手続きについて、基本的な事項や具体的な手続きの内容を中心にご紹介していきます。

 

 1.住民税の2つの納付方法

   住民税には「特別徴収」と「普通徴収」の2種類の納付方法があります。

  ①特別徴収

    会社が本人に代わって住民税を納付する方法です。会社勤めをしているサラリーマンは、通常この

   特別徴収の方法により住民税を納付します。

    従業員の住民税を給与から天引きして預かり、翌月10日までに会社が納めます。この特別徴収は毎 

   年6月から始まり5月で終わります。(6月分~5月分が1年分となります)

  ②普通徴収

    会社を介さずに、従業員本人が納付する方法です。会社勤めをしていない自営業者の方などは、こ

   の普通徴収の方法により納付します。 

    この方法は、原則として各市町村が個人に対して納税通知書を交付し、6月、8月、10月、翌年1

   月の年4回に分けて納付する形式になっています。

    なお、従業員が普通徴収で住民税を納付している場合には、会社側で住民税の手続きはありません。

 

 2.退職時期によって変わる住民税の徴収手続き

   退職後の住民税の納付方法は、従業員が「いつ退職したか」によって変わってきます。大きく以下の

  2つに分けることができます。

  ①1月1日~5月31日までの間に退職した場合

    最後に支払う給与から、特別徴収していない残りの住民税全額を天引き(一括徴収)して、それら

   を一括で納付します。

    なお、退職金がある場合には、退職金から天引きしても構いません。

  (具体例)

   (イ)1月中の退職→1月~5月までの住民税5ヶ月分を一括徴収(一括納付)

   (ロ)2月中の退職→2月~5月までの住民税4か月分を一括徴収(一括納付)

   (ハ)3月中の退職→3月~5月までの住民税3か月分を一括徴収(一括納付)

   (ニ)4月中の退職→4月~5月までの住民税2か月分を一括徴収(一括納付)

   (ホ)5月中の退職→5月分の住民税を徴収して納付(通常の特別徴収と同じ)

  ②6月1日~12月31日までの間に退職した場合

    6月から12月までの退職の場合には、以下の3つの方法のうち退職者が選んだ方法になります。

  (具体例)

   ・8月中に退職した場合

   (イ)普通徴収→8月分の住民税は特別徴収、9月以降は普通徴収

   (ロ)特別徴収→8月~翌年5月までの住民税10ヶ月を一括徴収(一括納付)

   (ハ)転職先で特別徴収継続→すぐに次の会社へ転職する場合で、本人から申し出があったとき

 

 3.具体的な手続き

   上記では、従業員が退職した際の住民税の納付方法等について説明してきましたが、ここでは各役所

  への具体的な手続きについてご紹介します。

  ①住民税異動届の提出

    従業員が退職した場合には各役所に対して「給与所得者異動届出書」を提出します。この届出書は

   必ず提出しなければならず、提出期限は従業員が退職した月の翌月10日となっています。

  ②給与支払報告書の提出

    従業員が退職した際には、まず本人に「給与所得の源泉徴収票」を交付します。また、これに加え

   て「給与支払報告書」も役所に提出する必要があります。ただし、この給与支払報告書は、年末調整

   後に全従業員分を各役所に提出するので、通常は退職者の給与支払報告書も年末調整後に他の従業員

   の分とまとめて送っても構いません。

    役所によっては、上記①の住民税異動届の提出後に、退職者の給与支払報告書の提出を求めるケー

   スもありますので、その場合は年末調整を待たずに提出する必要があります。

 

  従業員の退職に伴う会社側の手続きは、社会保険関係などの手続きもあり、住民税の手続きは後回しに

 なったり、うっかり忘れてしまったというケースもあります。

  今回の記事で改めてご確認いただければと思います。