最近、テレビ等で「人生100年時代」という言葉を良く耳にするようになりました。医療技術の発達により、人生を謳歌できる時間が伸びたのは
非常に喜ばしいことです。しかし、同時に老後の生活に不安を覚える方が増えてきているのもまた事実です。そこで、今回は老後の生活設計の基礎
となる年金の支給時期について見ていきたいと思います。
1.年金の支給時期についておさらい
年金には、国民年金(老齢基礎年金)と、厚生年金(厚生老齢年金)の2つがあります。
○年金の支給開始時期
1)国民年金(老齢基礎年金) 原則65歳支給開始
2)厚生年金(老齢基礎年金)
・男性 S28.4.1以前生まれ 女性 S33.4.1以前生まれ →原則60歳支給開始
・男性 S28.4.2~S36.4.1生まれ 女性S33.4.2~S41.4.1生まれ →年齡に応じ原則61~64歳支給開始
・男性 S36.4.2以降生まれ 女性 S41.4.2以降生まれ →原則65歳支給開始
※年金の受取開始年齡は原則として65歳ですが、65歳より早くもらう「繰上げ支給」、65歳より遅く貰う「繰下げ支給」という制度があります。
2.年金の繰上げ支給
年金の繰上げ支給とは、最速60歳から年金を繰上げて支給してもらう制度です。
◯メリット
・当然ながら、早く年金が受給できる。
・76歳8ヶ月になるまでは、年金の受取総額が大きくなる(60歳受給開始の場合)
◯デメリット
・年金額が一生涯減額される(月0.5%、60歳まで繰上げると0.5%×60月=30%の減額)
・76歳8ヶ月を超えると、年金の受取総額が少なくなる(60歳受給開始の場合)
・障害基礎年金を請求することが出来なくなる。
・寡婦年金が支給されない。既に寡婦年金を受給していても権利がなくなる。
・65歳になるまで、遺族厚生年金が併給できない。
・働きながら年金を貰う場合には、「在職老齢年金」によって減額される。
3.年金の繰下げ支給
年金の繰下げ支給とは、最長70歳まで年金の支給開始時期を遅らせる制度です。
◯メリット
・年金額が一生涯増額される(月0.7%、70歳まで繰下げると0.7%×60月=42%の増額)
・81歳10ヶ月を超えると、年金の受取総額が多くなる(70歳受給開始の場合)
◯デメリット
・81歳10ヶ月になるまでは、年金の受取総額が少なくなる(70歳受給開始の場合)
・加給年金が受け取れない(老齢厚生年金を繰下げた場合)
4.結論
以上、年金の繰上げ支給、繰下げ支給について、メリット・デメリットを見てきました。支給額で判断するならば、 繰上げ支給は76歳8ヶ月、
繰下げ支給は81歳10ヶ月がひとつの分岐点になります。ただし、家族構成や健康状態、働くか働かないか等の事情によって、それぞれメリット、
デメリットは異なります。なお、新規年金受給者で繰上げ支給を申請する人の割合は、10年前は20%を超えていましたが、現在では10%を割って
おり、今後もこの傾向は続くと思われます。
皆様も、年金受給の際には、老後の人生設計を今一度検討した上で、ご自身にとって一番良いと思われる方法を選択される事を願います。