~相続人の範囲と法定相続分~(2018年10月号)

相続税の基礎控除額の4割減額の改正(2015年1月1日以降)が施行されてから、早3年が経とうとしています。改正により申告対象者の割合が改正前の2014年は4.4%だったのに対して、改正後の2015年は8.0%、2016年は8.1%へと増加しました。改正の影響が数値にも表れています。今回はより身近になった相続税の基礎である相続人の範囲と法定相続分についてご説明していきます。

1.相続人の範囲

(1)範囲                                

死亡した人(被相続人)の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。

なお、内縁関係の人は、相続人はなれませんが、遺言によって遺贈することは可能です。

 

順位

被相続人との関係

第1順位

子供またはその代襲相続人

第2順位(第1順位の人がいない場合)

直系尊属(父母や祖父母)

第3順位(第1及び第2順位の人がいない場合)

兄弟姉妹またはその代襲相続人

 

(2)代襲相続

代襲相続は、被相続人の子および兄弟姉妹にのみ認められた制度で、これらの人が相続発生時に既に亡くなっている場合等にその直系卑属が代わりに相続分を相続する制度です。

第1順位の子供が既に死亡している場合には、その直系卑属(子供や孫など)が代襲相続人になり、その死亡した人により近い世代が代襲相続人になります。その死亡した子供に子供や孫がいる場合には、より近い世代である子供に代襲されます。

第3順位の兄弟姉妹が既に死亡している場合には、その子供、つまり甥や姪が代襲相続をすることになります。但し、第1順位の場合と違って甥や姪までが代襲相続人となり、その甥や姪の子供以降の世代には代襲相続はされません。

 

(3)相続放棄

相続は放棄することも可能です。遺産が資産(現預金、不動産等)<負債(借入金等)などの場合等で、相続をしたくない場合に相続を放棄することで、負債を相続せずに済みます。

なお、相続放棄をするためには相続があったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をする必要があります。また、相続放棄手続をした場合には、取消しは出来ませんので注意が必要です。

 

2.法定相続分

(1)法定相続分

法定相続分とは、民法で定められた相続人の相続割合のことで、次のとおりとなります。

なお、遺言等で法定相続分によらずに遺産を分割することは可能です。

相続人

法定相続分

配偶者と子供

配偶者1/2 子供(2人以上のときは全員で)  1/2

配偶者と直系尊属

配偶者2/3 直系尊属(2人以上のときは全員で)1/3

配偶者と兄弟姉妹

配偶者3/4 兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)1/4

注)配偶者が既に死亡している場合は、配偶者の分を相続順位に従って子供等に相続されます。

 

 

具体例で見ていきたいと思います。

相続財産が1億円で、相続人が次の場合の法定相続分は次のとおりになります。

【例1】相続人が配偶者と子供2人の場合

配偶者      1億円 ☓ 1/2(法定相続分)       = 5,000万円

子供1人当たり  1億円 ☓ 1/2(同) ☓ 1/2(子供人数) = 2,500万円

 

【例2】配偶者と両親2人の場合

配偶者      1億円 ☓ 2/3(同)                     = 66,666,666円

両親1人あたり  1億円 ☓ 1/3(同) ☓ 1/2(両親人数) = 16,666,666円

 

以上、相続人と法定相続分について簡単に説明しました。基礎控除額の引き下げより相続税の対象範囲が広がり、今までは相続税とは無縁だった人も対象となる可能性があります。もし、自分も申告が必要になるかも?と疑問に感じましたら、どうぞお気軽に担当者までご相談下さい。

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