~土地・家屋の相続税評価方法~(2018年8月号)

   平成27年より、相続税の基礎控除額が今までの6割に引き下げられたのはご存知かと存じます。

例えば、配偶者、子供2人の場合、基礎控除額は7,000万円→4,200万円となり、相続税が掛かる方が

大幅に増えました。そこで、今回は相続財産で大きなウェイトを占める土地・家屋の評価額の算定方法

をご説明します。

1.土地の評価方法

 (1)評価の区分

    土地は、宅地、田、畑、山林等の地目別に評価方法が異なります。地目は、登記簿上の地目に

   関らず、現況により判断します。例えば、登記簿上は「山林」となっていても、アパートの敷地

  になっている場合は、「宅地」として評価します。今回は、「宅地」に絞ってご説明します。

 (2)宅地の評価単位

    宅地は、利用の単位となっている1区画の宅地(「1画地」といいます)ごとに評価します。

   利用の単位とは、自宅敷地、貸家・アパートの敷地、駐車場等で、必ずしも1画地=1筆となって

    いるとは限りません。

 (3)宅地の評価方法

     宅地の評価方法は以下の2つがあり、所在地に応じてどちらで評価するか決められています。

     路線価方式…市街地的形態を形成する地域にある宅地(都心部は多くが路線価方式です)

        評価額(自用地)=路線価(※1)×補正率(※2)×宅地の面積(㎡)

     ※1 路線価は国税庁のホームページで調べることが出来ます。路線価の単位は「千円」です。

     ※2 奥行きが長い、間口が狭い等の地形に応じて、補正が入ります。また、複数の道路に

                         面している土地(角地など)は利用価値が高いので評価が加算されます。

  ②倍率方式…①の路線価方式以外の宅地

        評価額(自用地)=固定資産税評価額(※3)×国税庁の定める倍率(※4)

    ※3 固定資産税の納税通知書と一緒に送付される「課税明細書」で確認できます。

    ※4 国税庁のホームページで調べることが出来ます(評価倍率表)

 (4)利用状況の違いによって異なる宅地の評価

       (3)に記した宅地の評価額は、いわゆる自用地(自宅の敷地や空地等、土地の利用に制限がない宅地)

         の 評価額です。実際には、宅地の利用形態(貸アパートが建っている、土地を貸している等)により

         評価額が変わってきます。

   ①借地権…地主の土地を借りて家を建てている場合の借地人の権利です。借地人は土地の所有

        者ではありませんが、借地借家法により保護されている為、評価対象となります。

    評価額(借地権)=自用地評価額×借地権割合(※5)

    ※5 借地権割合は路線価図・評価倍率表に記載されています。

   ②貸宅地…上記①の借地権が設定されている宅地の底地部分

    評価額(貸宅地)=自用地評価額×(1-借地権割合)  

   ③貸家建付地…地主が貸家を建てている場合のその敷地。アパートや賃貸ビルの敷地が該当します。

    評価額(貸家建付地)=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合(※6)) 

    ※6 借家権割合は30%です。

2.家屋の評価方法

  家屋の評価は、原則として固定資産税評価額に基づきます。以下、利用状況ごとの評価方法です。

 (1)自用家屋

   評価額=固定資産税評価額(×1.0)

 (2)貸家・アパート

   評価額=固定資産税評価額×(1-借家権割合)

 (3)マンション

   マンションの評価は、土地部分と家屋部分に分けて行います。

   土地は上記1で評価した敷地全体の評価額に持分割合を乗じて評価します。

   家屋は当該居室の固定資産税評価額がそのまま評価額となります。

 

      以上、宅地・家屋の評価方法を簡単にご説明しました。基本的には、評価額が基礎控除額を超えると

        相続税の納税義務が発生します。但し、居住用や、貸付用の土地には評価減の特例もありますので、

        必ずしも納税額が発生するとは限りません。今回、評価をしてみて、もしかしたら相続税がかかるかも?

        と心配になられた方は、遠慮なくご相談下さい。