日刊建設工業新聞 [2018年5月29日1面]
◇基本問題小委に論点提示
国土交通省は建設業の担い手確保に関する制度的な方策を検討する。技能者の法令上の位置付けを明確化し育成や配置を推進する方策として、一定の技能者の配置を発注者や元請企業などがリクエストできる制度を創設。知識や技能の向上に努めることを義務化する考えも打ち出した。建設業許可要件の一つである経営業務管理責任者要件が若手後継者への引き継ぎの足かせとの指摘も踏まえ、廃止を含め見直しの検討に入る。
28日に開いた中央建設業審議会(中建審、国交相の諮問機関)と社会資本整備審議会(社整審、同)の下に設置している合同の基本問題小委員会で、国交省は技能者の位置付けや経営業務の管理責任者に関する論点を提示した。
国交省は技能者が減少していく状況下でも、建設業法の目的である「適正な施工の確保」と「発注者保護」を実現できる制度設計が必要と判断。建設キャリアアップシステムを活用した技能者の「能力評価制度」の構築を前提に、一定の工事で注文者(発注者、元請・下請関係の元請)が請負人に対し、工事施工に必要な一定の知識・技能を有する技能者の配置などをリクエストできる制度の創設を提示した。
リクエストするため、現場で作業する技能者の見える化も検討する。施工体制台帳で作業員名簿を添付することを制度化するなどの方策を例示した。建設工事の従事者一人一人の育成を通じて生産性向上を図るため、工事の適正実施に必要な知識や技術・技能の向上を努力義務化。建設リカレント(学び直し)教育を促す狙いもある。
国交省はリクエスト制度の創設や作業者の見える化を通じて技能者に焦点を当て、現場で働く技能者の誇りや処遇改善などにつなげていく考え。さらに技能者を雇用・育成する企業が選ばれるような環境を整えていく方針だ。
国交省は業法に基づく許可制度で経営の安定性を評価する経営業務管理責任者要件を見直す。今後も経営業務の重要性は変わらないが、制度の充実による経営の見える化や外部からの監視の強化など多面的・複層的に建設業者の経営がチェックできる。一方、経営層の高齢化が進む中小企業では、経営業務に関する経験年数などの要件が、若手の後継者に引き継ぐ上で足かせとなるとの指摘もある。
国交省は社会保険加入の許可要件化を検討していることも踏まえ、経営業務管理責任者要件を見直す。例えば、▽5年の実務経験などの要件の廃止、適正な業務実施のための社内体制整備を要件化▽許可要件として廃止、経営管理の担当者が外部から関わる▽経営業務管理責任者要件を廃止-などを挙げた。