先月号に引続き、平成30年度の税制改正及び前年度以前の改正により平成30年度から適用される改正項目に
ついてご紹介していきます。今回は資産税について、主な改正点をご説明します。
◎資産税関係
- 事業承継税制の特例の創設〈増税・減税〉
今までも、相続税及び贈与税に係る事業承継制度はありましたが、要件が厳しく利用が進んでいませんでした。
しかし、本年度の改正により制度が拡充され、より利用しやすい制度になります。
新制度は平成30年1月1日~平成39年12月31日までの相続等により取得する財産に係る相続税又は贈与税
について適用となります。
【現行の制度からの改正点】
内 容 | 【改正前】 | 【改正後】 | |
相続税・贈与税の負担を軽減 | 対象となる株式 | 株式数の最大3分の2が対象 | 後継者が取得した全ての株式が対象 |
納税猶予割合 | 対象となる株式に係る相続税の80%が猶予対象 | 対象となる株式に係る相続税の100%が猶予対象 (贈与税は従前より全額が対象) | |
承継パターンの拡大 | 贈与人・ 被相続人 | 代表権を有していた者 | 代表権を有していた者以外の者も 対象 |
後継者 | 同族関係者で過半数の議決権を有する後継者1人 | 最大3名まで猶予 (議決権10%以上を有する者のみ) | |
相続時精算課税制度の適用範囲 | 贈与者の直系卑属等 | 相続人以外の後継者も対象 | |
雇用要件の緩和 | 雇用維持要件 | 承継後5年間は平均80%の 雇用維持が必要 | 雇用維持要件は実質撤廃(80%を下回った場合、理由書の提出により納税猶予は継続) |
経営環境変化への対応 | 事業譲渡や解散・合併・廃業等 | 会社を譲渡・解散・合併等 した場合は、原則、猶予税額 を全額納付 | 会社を譲渡・解散・合併等した場合でも、その時点での株式価値を再計算して差額を免除 |
【適用を受けるための手続き】
この特例を受けるためには、平成35年3月31日までに『特例承継計画』を各都道府県に提出した上で、
平成39年12月31日までに承継を行う必要があります。
- 小規模宅地等の特例の見直し〈減税・増税〉
小規模宅地等の特例とは、相続時に被相続人の居住の用又は事業の用に使われていた宅地について、相続税を
減額する制度です。このうち、本来の趣旨に沿わない制度について、要件が見直されています。
この改正は、平成30年4月1日以後の相続について適用となります。
改正点① 介護施設等への入所〈減税〉
介護施設等に入所したことにより、被相続人の居住の用に使われなくなった宅地等についても、被相続人の
居住の用に使用されていたものとみなし、特例が受けられるようになります。
改正点② 貸付事業用宅地の制限〈増税〉
相続開始前3年以内に貸付けを開始した不動産については、小規模宅地等の特例の対象から除外されます。
→この改正により、一時的に現預金を都内のタワーマンション等の不動産に換え、本特例を利用して相続税
負担を軽減するスキームが使えなくなります。
改正点③ 「家なき子の特例」の要件追加〈増税〉
いわゆる「家なき子の特例」とは、被相続人に配偶者も同居している相続人もいない場合に、3年以上自分
の持家に住んでいない親族がこの不動産を相続すると、小規模宅地等の特例が受けられるという制度です。
詳細は省略しますが、この制度を受ける為に、孫へ自宅を遺贈(遺言により相続させる)ケースが増えて
来た為、新たな要件が追加されました。
→この改正により、遺言書により、孫へ自宅を引継がせることによって、「家なき子の特例」を受ける
スキームが使えなくなります。
3.土地の相続登記に対する登録免許税の特例〈減税〉
相続により土地を取得した者が所有権の移転登記を行わずに死亡し、その者の相続人等がその死亡した者を
登記名義人とする移転登記を行う場合は、登録免許税が免税となります(従前:固定資産税評価額×0.4%)
この制度は、平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間の移転登記に対して適用となります。
4.タワーマンションに係る課税の見直し(H29年度改正)〈減税・増税〉
高さ60m超のタワーマンションに係る固定資産税、都市計画税及び不動産取得税について、高層階ほど増税、
低層階ほど減税となります。この改正は、平成30年度から新たに課税することとなるタワーマンションにつき
適用されます。(平成29年4月1日以前に売買契約が締結されたものは除く)
→改正前は、タワーマンションは階数に関わらず、床面積が同じであれば、固定資産税等は同額でしたが、
実際の取引価格は高層階ほど高額になる傾向がある事から、それを考慮した税額へ見直されました。