★今月のトピックス!~資本的支出と修繕費~
建物などの固定資産の修繕を行った際、その修繕の内容や支出した金額の多寡によって、固定資産に計上されるのか、修繕費として支出時の費用に計上されるのかの取り扱いが変わってきます。今回は、資本的支出と修繕費をどのように区分していくのかをご紹介します。
1.資本的支出とは
資本的支出とは、「修繕費のうち、資産の使用期間を延長させたり、資産の価値を増加させたりするための支出」と定義されています。
<資本的支出に該当する例>
- 建物に避難階段を設置したなど、物理的に新たな部分を追加した費用
- 用途を変更するために模様替えを行った費用
- 機械の部品を交換する際に、通常の交換に要する部品よりも高性能のものを取り付けた場合、その通常要する費用との差額部分の費用
2.修繕費とは
修繕費とは、「固定資産の修理・改良等のために支出した金額のうちその固定資産の通常の維持・管理のため、又は災害等によりき損した固定資産につきその原状を
回復するために要したと認められる部分の金額」と定義されています。
<修繕費に該当する例>
- 建物を解体移築した場合のその解体にかかった費用
- 機械装置の移設に要した費用
- 建物の壁の塗替え・床のき損部分の取替え・畳の表替えに要した費用
3.資本的支出と修繕費の判定
資本的支出と修繕費の区分については、支出した金額の多寡や周期により区分する場合もあります。下記は修繕費として処理できる一例です。
- 支出した金額が20万円未満である場合
- おおむね3年以内の周期で支出している場合
- 資本的支出・修繕費の定義では判別できないが、支出した金額が60万円未満である場合
- 継続して資本的支出と修繕費を7対3で区分して経理している場合
4.会計上の違い
支出した費用の額が修繕費に該当する場合には支出時に全額費用とすることができますが、資本的支出に該当すると固定資産として取得価額に含まれ、
減価償却費として費用計上されていきます。
利益が出ていている年に節税のため修繕を行うことを検討されることもあるかと思いますが、その修繕が資本的支出に該当することとなると、支出時に
その全額を費用として計上することはできません。
次の事例では、会計上資本的支出に該当するか修繕費に該当するかでどのような違いがあるのかを比較してみます。
- 一の修理・改良に要した費用の額が100であった場合
〔資本的支出に該当〕 ※10年定額法にて償却するものと仮定
1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目 8年目 9年目 10年目
〔修繕費に該当〕
1年目
5.まとめ
このように、修繕を行った場合には、修繕の内容や金額なども踏まえた上で、固定資産として計上されるのか、修繕費として一時に費用とすることができるのかを考慮しなければなりません。また、災害があった場合に原状回復を行った際には修繕費として計上できる特例があるなど、状況に応じて判断をしていくケースが多いのも、資本的支出と修繕費の区分の特徴になります。金額が大きい場合や判断に迷う場合には、修繕を検討されている段階でご不明点をご相談いただければ、アドバイスさせていただきます。