~算定基礎届と年度更新の注意点~(2018年6月号)

6月に入り、毎年行われる社会保険の算定基礎届、労働保険の年度更新の時期となりました。

今回はそれぞれの手続について簡単にご説明します。

 

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の算定基礎届

算定基礎届とは、毎年1回、4月から6月の報酬を届け出ることで、その年の標準報酬月額を決定する手続きをいいます。

この届出をもとに、対象となる報酬をその総月数で除して報酬月額が計算され、その年の9月から翌年8月までの保険料が決定されることになります。ポイントは以下のとおりです。

 

1.7月1日に在籍している被保険者が提出の対象!

休職中や7月に退職予定であったとしても、7月1日に在籍している被保険者のすべての方が対象となります。

なお、6月1日以降に資格を取得した方(資格取得時に届出)や7月に月額変更届を提出する方は算定基礎届の提出は不要です。

 

2現物給与も報酬に含まれます!

賃金、給料などの名称を問わず、労働の対価として支払われるものすべてが報酬に含まれます。

また、金銭に限らず通勤定期券や食事など現物支給されるものも含まれます。ただし、年3回以下の賞与や臨時に支給されるものについては含まれません

通勤定期券は3か月や6か月単位でまとめて支給している場合でも、1か月あたりの金額を算出して各月に加算して計算するなど、現物で支給されるものには注意が必要です。

 

3対象期間(支払基礎日数)に注意!

標準報酬月額は、通常4月から6月の3か月が対象となりますが、支払基礎日数(報酬の支払い対象となった日数)が17日未満の月は除かれます

例えば、月給制で毎月20日締、25日支払いの場合は、4月の給与の支払対象は3月21日から4月20日となり、支払基礎日数は4月が31日、5月は30日、6月は31日ですので、3か月すべてが対象ということになります。

今回は、特殊なケースをいくつかご紹介します。

 

短時間就労者の場合(アルバイト等で、所定労働時間及び日数が一般社員の4分の3以上の方)

一般の対象者と同様に支払基礎日数が17日以上の月が1か月でもある場合はその月が対象ですが、すべての月の支払基礎日数が17日未満で、そのうち15日以上の月がある場合にはその月を対象とします。

 

短時間労働者の場合(所定労働時間及び日数が一般社員の4分の3未満で一定の要件を満たす方)

所定労働時間(日数)が一般社員の4分の3未満であっても、常時501人以上の企業に勤めている等の要件を満たす方は対象となります。

短時間労働者は、一般対象者とは異なり、支払基礎日数が11日以上の月が対象となります。

 

短時間労働者である月とそうでない月が混在した場合(途中から短時間労働者になった場合)

例えば、5月から短時間労働者となり、支払基礎日数が4月は16日、5月は11日、6月は12日の場合は、その月の区分によって判断することになります。

よって、4月は一般の対象者と同様に支払基礎日数が17日未満であるため対象外、5月と6月は支払基礎日数が11日以上のため対象となります。

 

支払対象期間の途中から入社した場合

給与の支払対象となる期間の途中から資格を取得したことにより、1か月分の給与が支給されない場合には、その月を除いた月が対象となります。4月途中入社の場合には、5月、6月の2か月が対象です。

 

その他、病気などの休職により、通常の報酬より低額の報酬であった月がある場合には、その月を除いた月が対象となる等ケースによって異なりますのでご注意ください。

 

労働保険の年度更新

労働保険(労災保険・雇用保険)は4月1日から翌年3月31日(保険年度)を対象とし、この期間の賃金総額に保険料率を乗じて計算されます。

年度更新とは、毎年6月から7月10日までに前年度の保険料を確定(精算)し、当年の概算保険料を申告・納付する手続をいいます。ポイントは以下のとおりです。

 

1.役員は含まれません!

労災保険、雇用保険は基本的に従業員を対象としているため、役員の方は対象となりません。労災保険はすべての従業員が対象となりますが、雇用保険は1週間の所定労働時間が20時間以上などの要件があります。

また、雇用保険については65歳以上の方は、改正により平成29年1月以降は雇用保険の対象となりました。ただし、4月1日時点で64歳以上の方は、平成31年度まで雇用保険の保険料が免除されています。

 

2賞与も賃金に含まれます!

労働保険の計算上の賃金とは、社会保険の標準報酬月額と同様に、名称にかかわらず労働の対価として支払われる通勤定期券や住宅手当などのすべての賃金をいいます。ただし、標準報酬月額の報酬には含まれなかった賞与も労働保険の賃金に含まれます。 

また、保険年度中に支払いが確定した賃金は、実際に支払われていない場合でも対象となりますので、注意が必要です。

 

3保険料は変わります!

労働保険の計算に使用される労災保険料率、雇用保険料率は見直されて変更となっている場合があります。保険料率は業種ごとに決められていますので、該当する業種の保険料率が変更された場合は注意が必要です。

なお、平成30年度については、雇用保険料率の変更はありませんでしたが、労災保険料率は変更されていますので、厚生労働省のホームページなどでご確認ください。

 

算定基礎届と年度更新は同じ時期に行う手続きのため、対象者や給与(報酬、賃金)の範囲など間違いがないように注意して申告する必要があります。