~平成30年度税制改正~(2018年4月号)

平成30年度の税制改正が発表されました。今年度は改正事項が多いため2回に分けてご紹介していきます。

今回は法人税と所得税の改正について要点を絞って、簡単にご説明します。

 

◎法人税関係

1.所得拡大促進税制の改正(中小企業者等の場合)増税減税

平成30年4月1日~平成33年3月31日までに開始する各事業年度から次のとおり改正されます。

【適用要件】

平均給与等支給額が前事業年度から1.5%以上増加している場合に適用となります。

現行の基準年度との給与比較、前事業年度との給与総額比較の要件は撤廃されます。

 

【税額控除額】

税額控除率が拡大されます。平均給与額の増加率が前年より2.5%以上増加している等の一定の要件を満たした場合には上乗せ措置があります。

①上乗せ措置なしの場合

(当年の給与総額▲前年の給与総額)☓15%

②上乗せ措置ありの場合

(当年の給与総額▲前年の給与総額)☓25%

 

【税額控除限度額】

法人税額☓20%(限度額に変更ありません。)

2.中小企業の投資を後押しする固定資産税の特例〈創設・減税

市区町村から先端設備等導入計画の認定を受けた中小企業者等が一定の機械装置等の対象設備を取得した場合、取得後最初の3年間は固定資産税がゼロ~1/2の範囲内(市区町村の条例で制定)に減額されます。

本制度の適用は、本制度の臨時措置法の施行日から平成33年3月31日までに取得した設備が対象となります。

 

.その他の改正

①法人税における収益の認識基準が現行は通達で規定されていますが、法令に規定され明確化されます。

②返品調整引当金制度が、平成33年4月1日から10年間の経過期間を設けて廃止となります。〈増税

 

◎所得税関係

.各種所得控除の見直し

次の所得控除の見直しがなされ、平成32年分以降から適用となります。

給与所得控除の見直し〈増税

給与所得控除額が一律10万円引き下げられます。また、給与収入が850万円超の場合には控除額の上限が195万円に引き下げられます。

なお、23歳未満又は特別障害者控除の対象となる扶養親族が同一生計内にいる場合には、負担の増減が無いよう措置がされます。

 

公的年金等控除の見直し〈増税

公的年金等控除額が一律10万円引き下げられます。また、公的年金等の収入が1,000万円超の場合には、控除額の上限が195万5千円に引き下げられます。

なお、公的年金等以外の所得がある方については合計所得金額が1,000万円超2,000万円以下の場合には、さらに一律10万円(合計20万円)引き下げられ、2,000万円超の場合にはさらに一律20万円(合計30万円)引き下げられます。

 

基礎控除の見直し〈減税

基礎控除額が一律10万円引き上げられます。但し、合計所得金額が2,400万円を超える方は、基礎控除額を徐々に減額し、最終的には消失する仕組みが作られます。

 

.配偶者控除と扶養控除の対象者の見直し減税

配偶者控除と扶養控除の対象となる者の合計所得金額の要件の見直しが図られ、次のとおりになります。

 

改正前

改正後

同一生計配偶者及び扶養親族

38万円以下

48万円以下

源泉控除対象配偶者

85万円以下

95万円以下

配偶者特別控除の対象となる配偶者

38万円超123万円以下

48万円超133万円以下

 

 

.青色申告特別控除の見直し増税

平成32年分から青色申告特別控除額65万円を受けるための要件が厳しくなります。

一般的な複式簿記を採用し、かつ、申告期限内に電子申告をしている場合又は電子帳簿保存を行っている場合に65万円控除を受けられますが、これ以外の場合には控除額が55万円に引き下げられます。

 

.NISAの利便性の向上に関する措置

NISA口座の開設手続きの見直し

平成31年1月1日以後に非課税口座簡易開設届を金融機関に提出するだけで即日NISA口座が開設され、同日に買い付け可能となります。NISA口座は一人一口座となりますが、仮に開設後に他の金融機関で二重口座となっていた場合には、開設当初に遡ってNISA口座から一般口座へ移管されます。

 

NISAにおける非課税期間終了時の対応変更

非課税期間が終了となった場合、引き続きNISAの非課税枠を活用するか、課税口座に移管するかの選択ができます。課税口座を選択した場合、現行では指定がない場合には一般口座に移管されることになっていましたが、特定口座を保有している場合には特定口座に移管されることになります。一般口座に移管したい場合には届出が必要になります。